chococo☆STAR SERIES 02
ねむれない夜に寄り添う、ロシェルと星たちのお話です。
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ねむれない夜でした。
ハク島の丘のうえ、星の塔チョココスターには、今夜も小さな明かりがともっています。
空の星たちは、まばたきばかりして、なかなか眠ろうとしません。
遠くでは、いつもの塔の音が、静かに、同じ歩幅で刻まれていました。
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星の塔のバルコニーに、ロシェルがいます。
ひつじのような、ふわふわの毛並み。頭には桃の飾り。
そこへ、夜の風を切って、タカのアロマが帰ってきました。ロシェルの相棒です。
アロマの目は、遠くの小さな明かりを、誰よりも早く見つけます。
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塔の中では、星のビーズが落ち着きません。
願いが動き出すと輝くはずのビーズが、今夜はまばたきみたいに、ちかちかと瞬くのです。
「星までねむれないなんて」
ローサは首をかしげながら、それでも丁寧にビーズを磨くのでした。
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そのとき、アロマが窓枠をとんとん、とつつきました。
羽の先が指す丘のふもと。家々の明かりが消えた中に、ひとつだけ、小さな窓が起きていました。
「アロマ、見つけてくれたるんっ」
ロシェルはビーズをひとつ、そっとポシェットに入れました。
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その窓の向こうでは、子どもがベッドの中で寝返りを打っていました。
明日は、大切な発表の日。うまくできるかな。まちがえたらどうしよう。
胸のどきどきが大きくて、星を数えても、目が閉じないのです。
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ロシェルは耳を澄ましました。聞こえてくる願いは、「ねむりたい」だけではありませんでした。
――明日、勇気を出せますように。
「ねむれないのは、がんばりたい気持ちの証拠るんっ」
ポシェットのビーズが、答えるように、ちかりと瞬きました。
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ロシェルは塔の工房で、77本の香りの小瓶を見渡しました。
今夜選ぶのは、桃のやさしさに、眠りのハーブを添えた、やすらぎの小瓶。
「香りは、急がせないものるんっ」
ほんの少しだけ、羽に移せるように準備をします。
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次にロシェルは、星のビーズを糸に通しました。
ひとつ触って、息を吸う。もうひとつ触って、息をはく。
数えるための輪ではなく、呼吸をゆっくりにするための、小さな輪です。
「これが、ねむりの輪るんっ」
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アロマは、ビーズの輪をそっとくわえ、桃畑のうえを音もなく飛びました。
羽ばたきの風に、やすらぎの香りがほんのり混ざります。
窓辺に輪を置くと、アロマは屋根のうえで静かに見守りました。
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子どもは窓辺のビーズの輪に気づき、手に取りました。
ひとつ、息を吸う。ひとつ、息をはく。
遠くの塔から、金色のサックスの、とても小さな子守唄が聞こえてきます。
ロシェルの音は、起こすためではなく、寄り添うための音でした。
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でも、一度だけ、どきどきが戻ってきました。
「やっぱり、ねむれない……」
子どもはぎゅっと目を閉じました。
涙がひと粒、枕に落ちます。窓辺のビーズも、ほんの少しだけ、光を弱めました。
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ロシェルは、無理に眠らせようとはしませんでした。
サックスの音を、もっとやわらかく、もっとゆっくりにします。
「ねむれなくても、大丈夫るんっ。休むことも、立派な準備るんっ。わたしは、そばで見守ってるるんっ」
その声の代わりに、香りの風が窓をなでました。
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子どもの呼吸が、ビーズのリズムと重なっていきました。
ひとつ、ふたつ……数える前に、まぶたが静かに閉じます。
そのとき、塔のビーズが、ぱあっとではなく、ふわりと温かく光りました。
空の星たちも、ひとつずつ、瞬きを止めて眠り始めたようでした。
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塔に戻ったアロマは、バルコニーで羽を休め、すぐにうとうと。
「アロマも、おつかれさまるんっ」
ローサは知らん顔で、アロマのそばに小さな毛布を置きました。
その手つきは、やっぱり誰よりもやさしいのでした。
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翌朝、子どもは目覚ましより早く目を覚ましました。
胸のどきどきは、昨日よりずっと小さい。
窓辺のビーズの輪を、そっとポケットに入れて、深呼吸をひとつ。
「いってきます」
小さな一歩が、朝の光の中へ踏み出されました。
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子どもの窓辺には、アロマの羽が一枚と、しずくの形をした小さなビーズが残っていました。
ロシェルは塔からそれを見つけ、首をかしげます。
「あのしずく、見たことがないるんっ……」
それはまた、次のお話。つづく
