chococo☆STAR SERIES 03
疲れたら、休んでいい。自分を大切にすることも、願いをつなぐ力になる。
第1幕:しずくのふしぎ
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静かな夜でした。
ハク島の丘のうえ、星の塔チョココスターには、今夜も小さな明かりがともっています。
ねむれぬ星たちの夜から数日、ロシェルは毎晩、誰かの願いに寄り添ってきました。
遠くでは、いつもの塔の音が、静かに、同じ歩幅で刻まれていました。
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そのとき、夜の風を切って、タカのアロマが帰ってきました。
くちばしに、そっとくわえているのは――しずくの形をした、小さなビーズ。
窓辺に残っていたのを、アロマが見つけてきたのです。
「それ、このあいだの……!」
アロマはバルコニーに降りると、ビーズをロシェルの手のひらに、ころんと置きました。
ビーズはほんのり温かくて、知らない香りがしました。
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塔の中では、ローサが首をかしげていました。
「しずくの形なんて、磨いた覚えがないよ」
それなのに、ビーズは時々、ちかりと瞬きます。
願いが定まらない夜に瞬く――それが、この形のビーズの性質でした。
「いったい、誰の願いが、この形になったるんっ……」
ロシェルは、ビーズを光にかざしました。
第2幕:笑顔のうらがわ
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その夜、ロシェルは新しい願いを感じました。
丘のふもとの、小さな花屋さん。
店主は毎日、花を買う人みんなに笑顔を届けています。
「いつもありがとう」
そう言われるたび、店主の花は、もっと明るく咲くのでした。
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でも、店が閉まったあと。
店主はひとり、花の水を取り替えながら、小さくため息をつきました。
つかれた、と言葉にすることはありません。
がんばるのが当たり前すぎて、自分の気持ちの置き場所を、忘れてしまっていたのです。
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ロシェルは工房で、エンジェルオイルの小瓶を手に取りました。
疲れた心をほどくための、特別な香りのオイルです。
ところがそのとき、しずくのビーズが、ふわりと光りました。
花屋のほうではなく――ロシェル自身の手の中で。
「え……わたしに、光ってるるんっ?」
第3幕:天使のしずく
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ローサは、工房の奥から、古い記録の本を持ってきました。
しずくの形のビーズには、昔からの名前がありました。
――「天使のしずく」。
涙でも、汗でもない。
誰かのために動き続ける人の心から、ぽとりと落ちる、光のしずく。
自分の疲れに気づけない人のそばに、あらわれる形だそうです。
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そのとき、窓から風が入ってきました。
風に乗って舞うのは、アロマの羽が一枚。
羽はふわりと工房をひと回りして、エンジェルオイルの小瓶のうえに、そっと降りました。
まるで、「最初の一滴は、ここ」と教えるみたいに。
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「でも、わたしは届ける側るんっ。自分のためになんて……」
ロシェルが首を振ると、ローサは知らん顔で、温かい飲み物を置きました。
「あんたが倒れたら、この塔の明かりは誰が守るのさ」
その言葉に、ロシェルははっとしました。
明かりを守ることも、願いをつなぐことのうちだったのです。
第4幕:最初の一滴
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ロシェルはバルコニーに出て、エンジェルオイルを一滴、手首に落としました。
深呼吸をひとつ。
桃のやさしさと、静かなハーブの香りが、胸の奥まで届きます。
そばではアロマも羽を休めて、うとうと。
「……たまには、こういう夜も、いいるんっ」
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目を閉じると、遠くの空で、小さな輪がふわりと光った気がしました。
ねむりの輪です。
眠っているあの子と、休んでいるロシェル。
寄り添う気持ちは、離れていても、同じリズムで光るのでした。
しずくのビーズも、ロシェルの手の中で、温かく瞬きました。
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少し休んだロシェルの音は、前よりやわらかでした。
金色のサックスの子守唄に、エンジェルオイルの香りを乗せて、花屋の窓へ。
「大丈夫。休むことも、立派な準備るんっ」
香りの風が、店主の肩を、そっとなでました。
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花屋の店主は、その香りに、ふと手を止めました。
胸の奥の、ぎゅっと固まった場所が、ほどけていく気がします。
「……今日は、少し早く店を閉めよう」
温かいお茶を入れて、椅子に座る店主の顔は、いつもの笑顔より、少しだけほっとしていました。
そのころ星の塔では、星のビーズがひとつ、ふわりと温かく光りました。
第5幕:自分へのありがとう
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塔に戻ると、ローサが小さな毛布を用意していました。
「寒い夜は、これくらい当然でしょ」
知らん顔の横顔は、やっぱり誰よりもやさしいのでした。
「ありがとう、ローサ」
ロシェルが笑うと、ローサはぷいっとそっぽを向きました。
耳だけ、少し赤かったそうです。
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ロシェルは、しずくのビーズを、小さなガラスの小箱に入れて、窓辺に置きました。
「天使のしずく」は、ロシェル自身のお守りです。
疲れたら、休んでいい。
自分を大切にすることも、願いをつなぐ力になる。
ビーズは、ロシェルがちゃんと休めた夜にだけ、そっと瞬くようになりました。
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今夜も、星の塔に明かりがともります。
明かりを守る人も、香りに癒やされる人も、みんな同じ星空の下。
ロシェルは窓の向こうを見て、ふと思いました。
「そういえば、塔のおふろ……ずっと使っていなかったるんっ」
――星降る夜のおふろのお話は、また次に。
つづく
次回予告:🌈 「ロシェルと、星降るおふろ」
