chococo☆STAR SERIES 04
休むことは、願いをあきらめることじゃない。温まってほどけた心にこそ、明日への力と、新しい夢が戻ってくる。
第1幕:ひらかれなかった扉
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静かな夜でした。
ハク島の丘のうえ、星の塔チョココスターには、今夜も小さな明かりがともっています。
「天使のしずく」の夜から数日。
ロシェルは、休むことの大切さを、少しずつ思い出していました。
遠くでは、いつもの塔の音が、静かに、同じ歩幅で刻まれていました。
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その夜、ロシェルはふと、塔のいちばん上にある部屋のことを思い出しました。
丸い窓のついた、小さなおふろの部屋です。
星空の下でお湯につかれるように作られたのに、忙しさにかまけて、ずっと扉を開けていませんでした。
「……今夜、久しぶりに開けてみるるんっ」
そっと扉を開けると、月明かりと、かすかな木の香りがしました。
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「いまさらおふろ? あんた、急にどうしたのさ」
後ろから声をかけてきたのは、ローサでした。
文句を言いながらも、もう片手にはバケツと布巾。
「……ほっとくと、また埃だらけになるでしょ。仕方ないから手伝うよ」
タカのアロマも、窓辺にとまって、静かに見守っていました。
第2幕:明日のための夜
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そのころ、丘のふもとの港町では、小さな宿の明かりが、まだ消えていませんでした。
女将さんは明日、大切なお客さまを迎えることになっています。
何日も前から準備をしてきたのに、前日の夜になると、心配ばかりが大きくなっていくのでした。
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「お出迎えの言葉はこれでいいかしら。お布団は、もう一度確かめて……」
女将さんは深夜になっても、メモを見直しては、ため息をついていました。
肩はぎゅっと固まったまま。
温かいお茶も、手つかずで冷めていきます。
がんばりたい気持ちが強いほど、心も体も、ほどく場所をなくしていたのです。
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星の塔の工房で、ロシェルはその願いを感じました。
「明日のために、今夜こそ休みたい」――そんな、ささやかな願いでした。
ロシェルは小瓶の棚から、「バスソーク」の壺をそっと取り出しました。
一日の疲れをほどく、星屑のお風呂の素。
「がんばる前の日は、まず休むことるんっ」
第3幕:星屑のバスソーク
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ロシェルは、特別なバスソークを調合し始めました。
星屑のきらめき、桃のやさしさ、静かなハーブの香り。
お湯に溶けると、星が浮かぶように光る――それが、星の塔のバスソークです。
「明日の力をためるおふろに、なりますように」
願いを込めて、小さな布袋に詰めました。
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そのとき、開いた窓から、ひらりと一枚の羽が舞い込んできました。
アロマの羽です。
羽はふわりと工房をひと回りして、できあがった布袋のうえに、そっと降りました。
まるで、「今夜の最初の一袋は、ここ」と教えるみたいに。
ロシェルは、できあがったおふろに、自分も入る約束を思い出しました。
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ロシェルが布袋を持って飛び出そうとすると、ローサが扉の前に立ちはだかりました。
「ちょっと待ちな。届けるあんた自身が、冷えて固まったままでどうするのさ」
「で、でも、早く届けないと……」
「先にあんたが温まりな。温かさは、温まった人からしか届かないんだよ」
その言葉に、ロシェルは、はっと目を見開きました。
第4幕:星降るおふろ
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ロシェルは、塔の上のおふろに、たっぷりのお湯をはりました。
バスソークをひとつかみ。
お湯の中で、星屑がゆっくり溶けて、小さな星が浮かびます。
肩までつかると、ほおっと息がもれました。
丸い窓の向こうには満天の星。
ときどき、流れ星が、湯気の向こうを過ぎていきます。
「……あったかいって、こんなに力が出るものだったるんっ」
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温まっていくうちに、ロシェルの心も、ほどけていきました。
遠くの港町で、今も起きている女将さんのこと。
同じ星空の下、同じ夜の静けさの中にいることが、温かさを通して伝わってくる気がします。
窓辺のガラスの小箱では、「天使のしずく」が、そっと一度だけ瞬きました。
ちゃんと休めている夜の、あの小さな瞬きでした。
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背中の羽を休めたアロマが、布袋をくわえて夜空へ飛び立ちました。
星明かりの海を渡って、港町の小さな宿へ。
女将さんが気づかないうちに、玄関先のそばへ、布袋をそっと置いて。
戻ってきたアロマは、バルコニーで満足そうに羽を整えました。
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メモを見返していた女将さんは、お湯の支度をしに立ったとき、玄関先の布袋に気づきました。
ほんのり温かくて、開けると星のようにきらめくバスソーク。
「まあ……どなたかしら」
その夜、女将さんは久しぶりに、ゆっくりとおふろにつかりました。
固かった肩がほどけていくうちに、心配は静かな眠気へと変わって――そのまま、深い夢の中へ。
第5幕:温かさのつづき
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朝。
女将さんは、すっきりと目覚めました。
「よく眠れた……。なんだか、今日は大丈夫な気がする」
昨日までの緊張は、温かい余韻に変わっていました。
海の向こうの星の塔では、星のビーズがひとつ、ふわりと温かく光りました。
休めた人の朝は、願いが動き出す朝でもあるのです。
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塔に戻ったロシェルを待っていたのは、ふかふかのタオルと、温かい飲み物でした。
「……風邪でもひかれたら、余計に面倒だからね」
知らん顔のローサの横顔は、やっぱり誰よりもやさしいのでした。
「ありがとう、ローサ。それと――今日は、わたしにも、ありがとうるんっ」
ロシェルは、星降るおふろを、これから星の見える夜の約束にすることに決めました。
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今夜も、星の塔に明かりがともります。
湯気の向こうで星が瞬くおふろは、願いをつなぐ人の、小さな休み場所になりました。
バルコニーで毛布にくるまったロシェルは、温かい心で、そっと目を閉じました。
その夜ロシェルが見たのは、自分自身の小さな夢でした。
――夢のつづきのお話は、また次に。
つづく
次回予告:🌈 「ロシェルと、夢のつづき」
